数奇な運命だ、と彼女は思った。 兄を追いかけて、兄の、ヴァンの弟子だった彼に出会った。 超振動の反発でバチカルからタタル渓谷に飛ばされたときは私がルークの前を歩いていたのに、いつの間にかに彼が私の前を歩いてる。 あの時の私には考えなかったこと、想像すらしていなかったこと。 それが現実になっている。 「神様って本当にいるのかな・・・?」 ティアは独りごちてみた。 その問いかけに応える者は誰もいない。 神様なんているのであればとても気まぐれで身勝手な存在に違いない・・・・・・だけど。 その身勝手に少しティアは感謝していた。 でなければ今、ここにこうしていることはなかった。 「どうしたんだよ。そんなに嬉しそうな顔して」 「そう? そんな顔してた?」 ティアは首を傾げ、逆にルークに問う。 「ン・・・・・・いや、何つーか。その・・・さあ」 言いにくそうにルークが言葉を探す。 だけど、その言葉が見つかることはなかった。 「どうしたの? 行きましょう」 すたすたとティアは必死になって言葉を探しているルークの横を通り過ぎる。 ムッとした様子でルークが後に付いてくる。 「呼びにきたはずなのに、これじゃ逆になってるじゃねぇか・・・!」 ぶつぶつと悪態をつくルーク。 そんな彼にふふっと笑うティア。 あの時に比べれば大人になった・・・・・・そう思う。 だけど、彼の中の何かは変わらずにそのまま、きれいなままだ。 彼はまだ七年しか生きていない。 しかも、その大半を自分の家に閉じ込められて。出ることさえも叶わずに。 成長したのはティアと旅をしてから。 人が成長するには誰かと関りあわなくてはならない。それも家族ではない誰か。 それはレプリカであろうと変わりはない。 ガイは彼に対して甘かった・・・・・・だから、彼の成長は起こらなかった。 それが間違っていたとは言わない。 成長とかそういうものに対して明確な答えはないのだから。 はっきりと答えが出るなんていうことはないのだから。 だから、人はそれを探そうとする。求めようとする。 明確な答えを求めて、未来さえも見ようとする。 自分が間違うことを恐れて。正しいままでいたいがために。 その果てにモースは何かを見失い、暴走した。 ヴァンは答えを知る手段を恨み、世界を殺そうとしている。 どちらも間違っているとティアは思う。 預言はただ単なる道しるべでしかない。 そこに執着し、求めすぎると道しるべは逆に失われる。 道は消えていってしまう。それに気がつかない人が多すぎた。 だから世界は滅びへと向かった。必然のように。 それもまたわかっていたこと、預言されたことであった。なのに。 人が道標の通りに進みすぎた影響で道は消えてしまった。 滅ばない未来への道はたくさんあったはずなのに、道は失われてしまった。ただ一つ滅びへの道を残して。 それを回避するために、変えるために私たちがいるのだ、とティアは思っていた。 誰でもなく、預言でもなく、私たちが決めたこと。 たとえ、それもまた預言に記されていることだとしても。 私たちはあがく。 変わる時まで、変わっていく時まで。 人は変われるのだから。変わる事ができるのだから。 いつか・・・・・・人が本当の意味で預言に縛られずに生きる時まで。 ユリアも、それを望んでいたと思うから。 「やっぱり貴方は間違っていたんだわ・・・・・・兄さん」 聞こえないくらいの声でティアは呟く。 「ん? 何か言ったか?」 「いいえ、何も」 ルークの方を向き、ティアは微笑んでいた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――― ブラウザバックでお戻りください。 |