風が優しく彼女の、ティアの髪を撫でた。
あれからヴァンと決着をつけてから大よそ半年あまりの時間が流れていた。
そんな時間が経っても彼は・・・・・・ルークは戻ってくることはなかった。
ガイも、ナタリアも、アニスも、ジェイドもみんなそれぞれの道へと歩んでいっている。
けど、みんな変わらずにルークは戻ってくると信じている。
バチカルでは彼を英雄とし、多くの人々が彼を死んだものとし悼んでいた。
くだらない・・・・・・ティアはそう思っていた。


ルークは死んでなどいない。
そうに決まっている。
彼には生きる決意も、守るべき者もあるのだからそう簡単に死ぬはずはない。
その思いが、私の足をここに運ばせたのかもしれない。


タタル渓谷。
私とルークの旅が始まった場所。
そして、旅が終わった場所・・・・・・エルドランドに近い場所。
そんなことは関わりなく花は美しく咲き、そして花びらが舞い散っている。
まるで・・・・・・雪のように。
儚げに舞い散り、そして空へと昇っていく。


あれから、もう半年も経ってしまった。
ルークは生きている。
そう信じてはいる。
・・・・・・だけど、同時に不安も心に染み渡っていくのもわかる。
ルークはもういないんじゃないか。
半年前にもう死んでしまっているんじゃないか。
時が経つにつれて不安も大きくなっていく。
生きている、そう信じているはずなのに。


あの旅ももう思い出となるだけの時は過ぎている。
そう、過ぎてしまったのだ。
もう思い出へと変わっていってしまっている。
彼との思い出も。


「・・・・・・きっと忘れないから」
そうティアは呟いていた。
忘れられるはずもない。
彼がいたと言う確かな思い出。
ルーク・フォン・ファブレという大切な人。
そして、彼の全て。


そう、ルークと言う人間はこの世界にいたのだ。
誰かの代わりとして生まれたとしても、確かに彼はここにいた。
それを忘れられるはずもなく、ここに再び彼を存在を感じようとしている。
思い出に変わったとしても、彼の存在を感じることは出来る。


もう世界を縛るものは何もないのだから。
預言も、第七音素もそれに頼ろうとするものは少しづつではあるがいなくなってはきている。
それを成したのはルーク。
彼の思いがそれを成したのだ。


彼の思いは結果として多くの人々の中にある。
そのときは誰として聞こうとしてなかったものが、
多くの人の中に伝わっている。
結果として多くの人の中にルークの思いはいることが出来る。
それがティアは嬉しかった。
世界が一度は否定したものが受け入れられたと言うことが。
自分の力で生き、自分の意思で選ぶと言うことが受け入れられたことが。
ティアには嬉しかった。


私は待ち続ける。
変わったこの世界で。
変わらずに私は待ち続ける。
彼が私の元に帰ってくるその日まで。
こうして、私は、
―――――――――待ち続ける。














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