「大丈夫か? 体は?」
「ええ、何とか」
そう言ってティアは薄く笑う。
彼女の体には「魔界」育ちのためか予想以上に瘴気が蓄積されていた。
致死量に近いぐらい・・・・・・これ以上無理はさせられないのが現状だ。
・・・しかし。


彼女は大丈夫だと言っていた。
本当は辛いはずなのに。
本当は限界のはずなのに。
それでも彼女はルーク達とともに行こうとしている。
自棄になっているわけでもなければ、絶望していると言うわけでもない。
なぜなら彼女の眼は死んでいない。まだ何かを信じている・・・そんな眼だった。


「なあ・・・」
尋ねたルークの声に「何?」とティアは答えた。
「・・・・・・ホントに無茶してないか? なんつーかさ、やっぱり俺は」
「俺は?」
口ごもったルークに急かすようにティアは尋ねる。
「もう2度失いたくないんだ。仲間を・・・命って奴をさ。あんな思いは・・・アクゼリュスの時のような思いはもう2度としたくない」
「そうね」
ティアが短く頷く。


「それは私も同じよ・・・あれを引き起こすきっかけを作ったのは・・・・・・兄さんなんだから」
その言葉にルークははっとなる。
あれを引き起こしたのは他でもないルークだ。
しかし、ああなるように裏で立ち回っていたのは他でもないティアの兄・・・ヴァンだった。
兄妹のしてしまったこと故に彼女も心を痛めていたのだろう。
亡くなってしまった命はもう戻らないのだから。


「だから・・・今度こそは止めるわ。例え・・・」
言いよどみ、ティアはその言葉の続きを紡ぐ。
「あの人を・・・・・・ヴァンを殺すことになっても」
自分と血の繋がった兄を殺す。
その言葉にルークはただ驚くしか出来ない。
ティアの覚悟と背負った業に驚くしか出来なかった。


「俺も止めたい・・・だから」
言って、ルークが微笑む。
「俺たちで止めよう・・・先生を。俺とお前とで!」
「・・・ルーク」
「おいおい俺たちは仲間外れか?」
と、金髪の青年・・・ガイが口を挟む。


「おやおや・・・・・・いけませんねガイ。私たちはただルークがいつティアを押し倒すのか見てただけだというのに」
「い、いつから見てたんだよ」
恐る恐るルークが尋ねてみるものの、
「もちろん最初からだよ。やっぱりルークはヘタレですね〜・・・大佐!」
「ええ、ルークも年頃ですからね〜・・・若さゆえの暴走に走ったらおもしろいな〜・・・とかは決して思ってませんよ」
「俗に出刃亀ともいいますわね。みっともないですわ」
と、ナタリアの鋭いツッコミが入る。
ははは、とガイも苦笑している。


「俺たちも出来る限りのことはする。だから止めようぜ。ヴァンを」
「うん。必ず!」
ルークが応えるように頷く。
止めよう、と心の中で強くルークは誓いを立てた。






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