ヴァンは死んだ。 全ての元凶であり、たった一人の肉親を斃した。 あの人の死は全ての終わりを意味する。そう、彼と彼女の時間も、また。 ルークはバチカルへ。 ティアはダアトへ。 それぞれの居場所へと戻っていく。 アブソーブゲートの中で、ふと歩きながらルークがティアを見る。 「・・・なぁ」 「何?」 「これから・・・何かすることって考えてるか?」 「別に・・・たぶん別の任務もあると思うから」 「そうか・・・」 彼もあんまり言葉が思いつかないのか、それきり黙りこんでしまう。 彼なりに気に掛けてくれてるのだろう。 ティアはたった一人の肉親と戦わなくてはいけなかったのだ。それを・・・辛くなかったと言えば嘘になる。 幼い頃から護り続けてくれた兄。その兄を斃さなくてはいけなかったのだから。 「ルークは・・・これからどうするの?」 「たぶんまた屋敷に戻って、色々とやらされんだろうな」 めんどくせぇ、とぼやき、ルークは心底嫌そうな顔になる。 「しっかりなさい、一応は英雄でしょう」 「・・・わかってるよ。でもな」 英雄という言葉に抵抗を覚えたのか、ルークが視線を逸らす。 「・・・英雄になれって言ってくれた人はもういないんだよな」 そうだ、その言葉を言ったのはあの人だった。 だから、彼は英雄になろうとした。 たった一人の尊敬する師匠の為にも。 それが理由されているとも知らず、傲慢でしかなかったとしてもその想いだけは本物だった。 敵であったとしてもヴァンは敬愛する師匠に他ならなかった。 それは・・・ティアも同じ。 たとえ敵であったとしても、彼が間違っていると思っていても、ヴァンは一人の兄なのだから。 「だから俺は・・・さよならは言いたくないんだ。あの人は俺の目標であることに変わりはないから。まだ俺はあの人を・・・本当の意味で追い越していない」 「・・・そうね」 ティアが薄く微笑を浮かべる。 そんな彼が愛おしいと思える。 いつか・・・彼がヴァンの影を追い越せる日が来る。必ず。 「その時が来ることを祈ってるわ」 「おう」 にかっと笑う彼の笑顔は眩しかった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ブラウザバックでお戻りください。 |