貴方はいない。
最後に微笑みを残して貴方は逝ってしまった。
私が殺したから。

ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
私が貴方たちを騙していなければ、あの人は死ななかった。
私が汚い人間でなければ、あの人は生きていてくれた。
私がもっと素直でいれば、あの人は隣にいてくれた。
私がもっと笑っていれば、あの人は笑ってくれていた。
――――――私があの人の隣にいなければ、殺されることはなかった。


ごめんなさい、イオン様。


イオン様なら気にしないでって言って笑ってくれるけど。
生きていく私は辛いんですよ。
貴方のいない世界に色なんてなくて。
少しづつ貴方が思い出になっていくのはとても辛いことなんですよ。
心の隙間から貴方の思い出がすり抜けて、私の心の中から居なくなっていくんですよ。

―――アニスはアニスだけの時間を生きて。
そう貴方は笑うでしょうけど。
貴方はいつも自分よりも人のことを優先して、自分の心を犠牲にしてしまうのは悪い癖だと思いますよ。
隣で心配させられる私の身にもなってください。
だけど―――それがイオン様のいいところでもあるからあまりきつく言えないんですよね。
最後までオリジナルの代わりとして―――そして、貴方としての時間を生きていた。そして、いなくなった。
貴方といた時間よりも、貴方がいない時間の方がずっと長くて心が壊れてしまいそうです。
でも、そんなこと言ったらイオン様怒りますよね。

だから、貴方が進んだ道と同じ所へ行こうと思います。
まだまだそれはずっと遠いけど、いつか必ず。

「さってと!」
あたしはグッと背伸びして。
「頑張っていきますか!」
わざと大きな声で言う。

この空の下には貴方はいないけど。
あたしは生きていきます。貴方のいない世界を。これからも。





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