押し潰されそうな威圧感を放ち、その耽美な白銀の仮面から覗かせる眼光は鋭い。アルト、アゼルス、シエルの三人の前に立つ男の気配は人のものではなく―――それを凌駕した異形のもの。
 冷徹に三人を見据える男の口元が歪む。

「なるほど……どうやら私は幸運であったようだ」
「何…」
 アゼルスが目を細めて、アルトとシエルの前に立つ。くつくつと笑う男の前にアゼルスが立ち塞がる。

「キミは先ほどの戦いぶりを見て、屈強な戦士のようだ」
 大仰に、恭しく手を男が振りかぶる。一々が芝居がかっている。
「それはつまり、キミは我が主の障害と成り得るということ。それを我が手で取り除かなければならないね」
「やはり……貴様、魔族か」

 忌々しげにアゼルスが言葉を放ち、男が冷笑を浮かべる。
 魔族。瘴気から生まれた魔物。それがより人に近く、人の言語を放ち、より人に近い思考を持つ魔物の超越存在。絶望や呪いから生まれた存在で、禍の種を世界にばら蒔き、人々を襲う人と相容れない種族。かつてのネクロゴンド遠征の際に確認され、魔王の手足として暴虐の限りを尽くし、連合軍を壊滅にまで追いやったとされる。
 圧迫感がより強くなっていく。それは男から放たれる威圧感が増していき、大気諸共城を押し潰すのではないかと思うほどに。

「おや……」
 ふと、男の視線がアゼルスから逸れ、その後ろで構えているシエルへと注がれる。それに一瞬だけ、ほんの僅かな時間、男に狼狽の色が浮かぶ。

「わ、…たし?」
「馬鹿な。……いや、違う。顔立ちはよく似ている。だが幼過ぎる…」

 シエルを見て、男が思案をし始める。指を唇に当てる。この男の知る誰かと、シエルが重なったようだった。当のシエルは呆然とただ佇むのみで、訳がわからないという風だった。

 だが、その一瞬に蒼い疾風が爆ぜた。
 距離を一瞬のうちに詰め、一閃が左から薙がれる。それにいつしか男に握られていた蒼い剣で受け止め、噛み合う。くっくと男が喉を鳴らす。

「随分と礼節を知らない。騎士ならば名乗るのが礼節じゃないかい」
「人の騎士相手ならばな。だが、貴様は人じゃない。魔の者だ。貴様はここで果てろ―――!」

 アゼルスの一閃が蒼い剣を粉砕して、その破片が大気に舞う。その一閃が男を引き裂かんと煌くものの虚空に軌跡を描く。男は大きく後ろに跳躍し、難を逃れる。

 それでアゼルスの攻勢は止まらず、そのまま突進し、真っ直ぐ駆け抜ける。唇が何かを囁き、瞬時に詠唱を始めていた。
 男の背後の空間がゆらり、と陽炎のような歪みが生じ―――次の瞬間、蒼い刃の煌きが虚空に出現する。輝きが躍り、展開された蒼い刃の群れ―――その数、八。
 虚空に漂う刃の群れがアゼルスを目掛けて殺到する。轟音は大気を揺るがし、炸裂する氷刃は空間そのものを吹き飛ばさんばかりであった。

 だが、それでも疾風の加速は止まらない。真っ直ぐに、深く一直線を駆け抜け、刃の葬列は深く抉らんとアゼルスを襲う。ぎり、と白銀の一閃を振るってアゼルスの剣が氷の刃を叩き落し粉砕し、その破片が凄烈な轟音と共に弾け飛ぶ。
 それでも尚、男の猛攻は止まらない。撃って撃って撃ち据える。攻撃は間断なく激しさを増していく。刃に抉り飛ばされた大理石の通路は発破をかけられたように吹き飛び、木っ端微塵となって視野を覆い尽くす。それでもアゼルスは一向に倒れ伏さずに、蒼い閃光となって駆け抜ける。

 氷の刃を叩き落しながらアゼルスが駆け抜け、仮面の男を薙ぎ払わんと鋼の光が煌く。それに青い氷の輝きが噛み合う。刃と刃が悲鳴上げ合い、大理石に通路にけたたましく反響する。仮面の下の眼光で、アゼルスの顔立ちを直視し、合点がいったとばかりに男がくつくつと笑う。

「なるほど、その顔立ち、かつての勇者オルテガの血縁か」
 アゼルスが何も答えずに返答代わりとばかりに、足元をすくわんと回し蹴りを放つが男が後ろに跳躍するが、直ぐ様にアゼルスが男を捕らえる。

「ならば、この私も……魔王バラモス様が四魔将、霊将エビルマージもまた全力で行かねばなるまい。我が力にて屠り、貴様というオルテガの影を断ち切ろう」
 アゼルスをエビルマージと名乗った魔将はオルテガの影と称した。言い得て妙だ。人々が期待しているのはアゼルスという個ではなく、オルテガの血筋という側面が大きい。そういう意味ではエビルマージの言は言い得ていた。だが、それでも、とアゼルスがその影を振り払うように剛剣を振るう。

 アゼルスの剣はエビルマージの氷刃を噛み砕き粉砕し、抉らんとしてまた生じた氷剣によって阻まれる。また生まれた氷の剣を破壊し、氷が舞い踊る。表決の粉砕と爆発が幾度なく生じ、虚空に舞い散っていく。

「俺は―――」
 ぎり、と噛み締め、真っ直ぐに魔将を睨み据えてアゼルスが言葉を放つ。

「何かを守るために戦う。それは『勇者の息子』ではなく、俺の―――意思だ!」

 アゼルスは決して血筋に甘えるような男ではない。英雄の子であるなら自分もそう在るべきだと自負したことなど一度だってない。かつて、家族の中に誰かが消失した。生きて帰ることはなかった。その悲しみを覚えている。忘れたことなどない。それが全世界に広がり、絶望を塗り広げる。
 アゼルスが異を唱えたのはその現実の方だった。誰かにとっての小さなかけがえのない日常が失われていく。それを、守りたいと願えた。だから、自分の心に生じる恐怖を振り切って戦える。それは紛れもなく『勇者オルテガの子』ではなく、アゼルスという意思から生まれた真実だった。

 粉砕されて舞う氷の破片は宝石のような輝くを放ちながら虚空を彩っていた。アゼルスの外套が靡く度に、勇者と魔将が刃を打ち合う度に青い雪のように踊る無数の光芒。
 煌いた瞬間に弾け消える氷の星々が死闘を彩り、幻想的な美しさを醸し出す。
 その藍色の眼でアゼルスの戦いを見守る。
 今、彼の眼前で繰り広げられる戦いの、度外れた凄まじさ。刃が軌跡を描く度に風が唸る。呪文が放たれる度に大気が悲鳴を上げ、絶叫している。意思と意思のぶつかり合い。己を、生命をかけた鬩ぎ合い。その刃と刃に込められた互いの信念と思惟が虚空に幾重にも反響し合う。

 幾度となく刃が噛み合い、鍔迫り合い、剣戟を振う。大理石の通路と壁は破壊の後に蹂躙され、破壊の傷跡を露にしている。
 仮面の男が舌打ちをし、この状況に焦燥を抱いているようだった。だが、打ち砕かれ、掌から生まれ出でたのは氷の剣ではなく掌と同じ大きさの火球であった。それを叩きつけるように足元で爆ぜる。爆発が生じ視界が白に染まり、粉塵が派手に巻き上がる。粉塵の中にアゼルスの姿が飲み込まれる。

 視界は灰色に染まる。
 巻き上がる熱が肌をなぞり、刹那的な熱が肌を焼き、砕け散った大理石の破片が巻き上げられた衝撃で顔に弾かれる。
 魔将の姿を視認しようとしてアゼルスの姿が一瞬だけ静止する。深く鋭い何かがアゼルスの右肩に軌跡をなぞり、派手に弧を描いた鮮血が粉塵と共に巻き上がる。
 エビルマージの姿を確認し、剣を振るおうと判断を下すも抉られた痛みで感覚を遮断され、僅かではあるがアゼルスの動きが鈍る。

 その間隙を付いて、アゼルスの軸足である右太腿に氷刃が突き刺さり、筋が断ち切れた摩擦がアゼルスの全身を這いずり回る。痛みを凌駕し、熱となった血潮は派手に虚空を彩り、消炎の最中に鮮血の匂いを漂わせた。
 痛みが奔り、アゼルスが瞬間的に完全に静止する。それを見逃さず、エビルマージがアゼルスの腹部に蹴りを叩き込み、アゼルスの身体が宙に舞う。

「さすがは勇者と賞賛しておこう。だが、私を斃すには僅かに足りなかったようだ」

 仮面から覗かせる怜悧な口元がにやりと歪む。エビルマージが大理石を蹴る音が幾度か響き、それが耳に届く音が次第に大きくなる。一際大きな音が弾けたかと思った瞬間に静かになる。奴がアゼルスの傍まで近づいたということだ。

「キミの死は有意義なものとなる」
 神に祈るようにエビルマージが大仰に両手で天を仰ぐ。

「また一つ、キミの死によって世界に絶望が増す。バラモス様が力を増すということだ。キミの死はとても有意義だ」

 この男は有意義だと嗤った。人の絶望が、人の苦しみがとても意味のあるものだと、それ以外の何かを切り捨てた冷たさが耳朶を打った。死の気配はそこまで来ていた。抗えない定め。抗えない自分。抗うための力は失われ、冷たいものが全身を優しく包み込む。
 諦めという甘美な優しさが自身に囁きかけ、立ち上がる力を奪う。もう止めようと瓦解した心が溢れ出して立ち上がる力を殺いでゆく。アゼルスは考えることをやめていた。
 それに異を唱えようとしたが、その刹那に深い鈍痛がアゼルスの腹部を襲う。エビルマージが足でアゼルスの身体を踏み付け、固定される。

「さよならだ勇者」

 その掌に氷の剣が生じ、心の臓に穿たんと鋭く煌いた。だが、その鋭利な刃は静止し、微かに止まる。小さな火球が迸り、エビルマージの右の手を焼く。それを阻んだ誰かをエビルマージが熱を持たない眼差しで、殺意を宿した。メラを唱え、邪魔したのはアルトだった。

「兄さんは殺さ…せ……ない」
 肌が粟立つほどの殺意を向けられ、たどたどしくアルトが言葉を口にする。アルトの足は竦んでいた。
唇は震え、場違いな華奢な少年に興味すらないといった様子で一瞥しただけでエビルマージが掌からメラミの火球を放ち、黄金の火球が大理石で爆ぜ、粉塵と共に灼熱を撒き散らす。それに焼かれたアルトは派手に吹き飛ばされる。

「無意味だな。無意味な殺生は私は望まない。大人しくしていたまえ」
 冷徹に宣告し、アルトに一瞥もせず、再び掌から氷の剣を生み出し、握る。

 迫る。理不尽はそこまで来ている。だが、それを良しとはしなかった者がいる。
 アルト。アゼルスの弟。例え何の力がなくても、暴力に瞬時に踏み躙られてしまうほど脆くとも、自分の意思でその理不尽に抗おうとした。家族…兄であるアゼルスを守るために。目の前で殺されようとしている自分の家族を守ろうとするために。

 少年の無謀の行動は―――アゼルスの心を呼び戻し、再び火をつけた。その真っ直ぐな眼差しが、胸を穿つ絶望を振り払ってくれた。
 勇者とは、力無き人々の剣であり、その希望を束ねる。そう在りたいと願うのであれば―――。

「焔よ目覚めよ、大地に眠る星の火よ、焔となりて轟け」
 アゼルスが天に向けて、掌を翳す。

「―――ベギラマ!」
 アゼルスの唇より放たれた音が熱となり、光となる。収束された閃熱が掌から放たれて、光がエビルマージの身体をも飲み込んで巻き上がる。それに吹き飛ばされてエビルマージの身体が虚空を舞うが、地面にふわりと舞い降りる。

 アゼルスが剣を支えにして立ち上がる。全身の肉が絶叫していた。動作の度に血が外に吐き出され、青に真紅が染められる。行動を起こす度に行き場を失った熱が蠢き、鋭い痛みが這いずり回る。
 全身を貫いた痛みが身体を引き裂きそうになる。だが、それでも全身の力を足に込め、崩れ落ちそうになる衝動を堪える。穿たれた鮮血より、臓腑に蠢く暴発より、その胸に蘇った意思がアゼルスの身体を突き動かそうとする。我が身が定めた勇者という道はあらゆる痛みを凌駕していた。

「兄……さん」
 呻くようにアルトがその背中を見つめて、問いかける。その声にアゼルスは決して振り向かなかった。

「お前は……強いな。アルト」
「―――え?」
 唐突に出た言葉にアルトが困惑を漏らす。

「さっきあいつに叶わなくとも俺を守ろうとしてくれた」
 ふっと、アゼルスは自分でこんな状況にも関わらずに、優しい声色で話せていた。心は酷く穏やかだった。

「だから、きっと、いつかお前にしか守れないもの、出来ないことがきっと見つかるさ。俺やシエル、ルシュカを守るために勇気を見せれるお前だったら、もっとたくさんの笑顔で強くなれるはずだ―――」
「……うん」

 少年の頬を、堰を切ったように溢れ出た涙が濡らす。その誓いに、少年に向き直って勇者は微笑んだ。少年から灯された勇気。それがアゼルスの中から達観も、絶望も消し去ってくれた。そして勇者は駆け出していた。その熱を足に宿し、解き放つように。

 目の前の魔将が煌く星の如く氷の刃の群れを幾重にも展開させる。その光は仰ぎ見る星空を連想させる。
 その星に向かって蒼い疾風が駆け抜ける。風が空に吹き抜け、届くように。
 一歩。また一歩と。ただひたすらにそれを繰り返す。降り注ぐ星星。意識さえも遠退きそうな猛威に姿勢が揺らぐ。だがそれはできない。なればこそ立ち止まれない。今、彼が駆け抜ける瞬間こそが己を信じた者、希望を込めた者に示せる祈りなのだから。

 星星を越え、踊る鮮血を踏み越えて、もう、すぐ待ち受ける魔将は目の前だ。後一歩―――更にまた次の一歩で、振り翳した剣は奴を引き裂く。勝利を確信したその瞬間。刹那が永遠へと引き伸ばされてゆく。
 振り下ろされるはずだった剣はすでにその手には無く―――腕すら、右腕から消失していた。瀑布の様に暴発した流血が弧を描いて、剣諸共彼方へと飛んで行く。敵の手に握られていた氷の剣が、アゼルスの腕を斬り飛ばしたからだった。

 魔将の指先から小さな火球が生じる急速に温度の高ぶりと共に金色に色彩を変えて、その掌から放たれる。
 最後の瞬間まで、その身体を突き動かしたのは誰かを守るという信念だった。その視界の全てが紅に染まり、勇者アゼルスは光の中に、消えていった。



 アルトはその瞬間を瞬き一つすることなく、全てを目に焼き付けていた。
 光と焔の中に世界の希望が消えていく。
 家族が、いなくなった。突然、自分の目の前で。だけど、無力だった。どうしようもないくらいに自分には何も出来ず、出来たのはただ見守ることだけ。
 当然のように自分の近くにいた人が、いて当たり前だった人が、理不尽に奪われてしまった。

 こんな風に、一方的に大切な誰かを、その誰かと過ごすはずだった時間を、その誰かのかけがえの無い笑顔を一方的に奪われた者たちが一体何人――。
 まだ十分に生きたとはいえない命、遣り残したこと、言葉を伝えられなかった命、命がこうしている間にも広がり、磨り潰されていく。そんな死は、人の死に方ではない。

 この胸を穿つものが、溢れ出る熱い滂沱を、多くの人々が知る。強制され、定めとされる。ささやかでもそこにあった小さな笑顔は理不尽に奪われ、永遠に消失する。


 それは―――ダメだ。


 少年の裡に溢れ出た哀しみが、多くの人を傷つけ、消えること無い傷跡を残し、平穏を奪い去る。どんな絶対者でも、それを許してはならないと目の前のを包む焔が猛っていた。

 父が、魔王討伐の末にいなくなった時に、少年はそれを自覚した。
 今、目の前で兄が消え去った瞬間に、それは信念へと形を変えた。

 アゼルスが残した熱が少年を呼び起こす。
 少年がきつく拳を握り締める。
 少年が立ち上がり、きつく前を見据え、真紅の先にいる異形を見据える。

「やってみるよ。僕」

 微かな声でアルトが告げる。その眼差しに映し出されていたのは悲しみでも、憤怒でもなく、確かな意思が宿っていた。
 この胸を裂く激情が人を濁し、悲しみや怒りで満たす。誰かの笑顔が消えていく。それを広げる者たち。涙で世界を満たそうとする心無き悪意。それを―――許していいのか?
 ―――否、それを許せるはずも無い。

 だが、自分はどうしようもなく無力だった。
 だから力が欲しいとアルトは願った。
 剣、それではダメだ。
 魔法、それでも届かない。
 足りない。足りない足りない足りない足りない足りない―――!
 理不尽に異を唱えられる力。その全てからみんなの笑顔を守りたいと強く誓えるだけの力を―――!

「みんなが笑顔でいられるように。それを守れるように。僕が―――そうしたいから…!」

 少年が高く、天に向かって手を翳す。そうして言霊に己の信念を宿して、それを解き放つ。
 その瞬間に何かが動き出す。遥かな、深く遠いどこかで、何かが。
 少年の思惟は超越し、自我は遥かな太陽よりも燦然と輝き、雨雲を抜けて、虹となって空を貫く。意思が世界を見渡す。その眼は蒼穹を捉え、身体は遥かな大海を渡っていた。
 青と蒼の狭間で、空と海の間で、少年の意識は何かを見ていた。それが何なのかアルトは知覚出来ない。自分の影に重なるモノ―――鳥のような何かの影が少年を包み込んでいた。

 翳された手に重なるように―――優しく何かが手を握り締めていた。それは、柔らかく少女の様な手だった。少年が影を仰いで、鳥の影に見えていた誰か。大空を抜き抜ける聖風に靡かれた金色の絹糸のような髪。陰に隠れて顔は見えなかったが、その表情は笑んでいた。そんな気がしていた。
 アルトの全身を光が駆け巡り、血と同化し光が歓喜と共に騒ぎ出す。少年の思惟は弾かれたように地上に呼び戻される。翳された手に天蓋を突き破って強大な爆雷が飛来する。その光に、華奢な身体は押しつぶされそうになる。全身全霊で身体を支える。

 その光は美しいのではなく、尊かった。
 少年の意志が、神代の頃から神の御使いが使うものとして謳われ、人が使うには分相応とされ、封印されしモノ。それを呼び起こした掌が振り下ろされる。

 振り下ろされた爆雷は白き竜となり、その全てを消滅させていった―――。


 この日、世界から一つの希望が失われた。

 だが、同時に、新しい希望が芽吹いた―――。



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